Nikon D750で野鳥を撮る

 

野鳥撮影時のAFモードについて

 

D750で使用出来るAFモードは、「シングルポイントAF」「ダイナミックAF」「3Dトラッキング」「オートエリアAF」「グループエリアAF」とあるが、

野鳥撮影に使用しているのは、シングルポイントAFと、グループエリアAFの二つ。

野鳥が飛翔する場合はグループエリアAFを使用し、それ以外の場合はシングルポイントAFを使用する。

 

3Dトラッキングも有力だが、森の中では保護色をもつ野鳥も多い。

そういった野鳥に対して、色情報も利用する3DトラッキングではAFが迷う可能性があるため使用しない。

とは言っても、森の中の場合は シダや小枝などにAFが持っていかれる可能性は常にあるため、その場合はMFで合わせる事もある。

余裕があれば、構図を考えて中央以外のポイントを使う事もあるが、基本的には一番精度が出る中央1点のシングルポイントAFで合わせるのが安心。

 

 

グループエリアAFで野鳥を撮影する

 

石垣島で、ミサゴをグループエリアAFで撮影した。

なお、AFの表示は後加工で追加している。

TAM_2629-af

 

ミサゴ

AFポイントは変更する事も出来るが、中央以外は使わない。

 

被写体を面で捉えるグループエリアAFは、飛翔する野鳥に対して非常に強力で、AFが背景に抜ける事が無くなった。

D4S、D810、D750に搭載されているAFモードだ。

 

AFの表示が非常に見やすく、合わすべき中央1点に余計な表示がされないのも、実際使っていて非常に気持ち良い。

AF表示の枠はカスタマイズで小さくする事も出来るが、デフォルトの表示が見やすく感じる。

 

那覇で、セイタカシギをグループエリアAFで撮影した。

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セイタカシギ

600mm  f/8 1/1500 ISO400 -1/3EV Aモード(絞り優先)

 

同じく、アオサギ

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アオサギ

600mm  f/8 1/800 ISO400 +1/3EV Aモード(絞り優先)

 

6.5コマ/秒という連写速度は、D750を野鳥撮影する上で、唯一不満が残る点だ。

しかし、例えばカワセミの飛び込みを撮影するのには不足するかもしれないが、

他の多くの野鳥を撮影するのに十分な連写速度だと思う。

 

 

シングルポイントAFで野鳥を撮影する

都内でゴイサギを撮影した。このように、画面中央付近にAFを合わせると目がボケてしまう場合は、

当然シングルポイントAFで目に合わせる。

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ゴイサギ

600mm  f/8 1/350 ISO3600 +-0EV マニュアル露出

 

ひいた場合は、シングルポイントAFでもいいが、光量が十分にあれば絞り込むのも良いかも知れない。

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メジロ

210mm  f/8 1/1000 ISO560 +-0EV マニュアル露出

 

 

超高感度で野鳥を撮影する

D750の高感度の画質は大変素晴らしい。

常用感度はISO12800という事だが、文字通りそれが常用出来る事に意味がある。

 

APS-Cセンサーで常用感度をISO100-16000としたり(EOS 7D MarkII)、ISO100-25600としている(D7200、D5500)機種があるが、

比較するまでもなくD750の方が高感度は強い。

APS-Cセンサーのカメラの方がカタログスペックでは高感度に強いという現象は、

初心者にとって非常に分かりにくく誤解を招くと思うのだが、とにかくカタログスペックでの常用ISO感度はあてにならないので、実写を確認した方が良い。

 

D750は2400万画素あり、大トリミングをしても十分な画素数がありながらも、高感度に設定した際の画質は賞賛に値する。

一般的に、画像を縮小する事で、ディティールの潰れを目立たなくする事が出来る事は知られている。

ウェブに掲載する程度であればスマホで高感度に設定しても問題無いぐらいだ。

2400万画素あるという事は、その余地が大きいという事だが、その上で高感度に設定しても破綻しにくいのだ。

 

 

ウグイスをISO12800で撮影した。

雨が降り出す直前で、かつ茂みの中だったため非常に暗い状態だった。

原寸で見ると、さすがにディティールが厳しい。しかし、2400万画素という画素数がそれをカバーする。

この写真により、ISO12800でも冊子に掲載するのにも十分な画質が得られる事を確認した。

(実際にこの写真は、写真集「The Birds of Ishigaki Iland and more」に掲載したもの)

 

※クリックで原寸画像を表示

大きな画像が開くので注意してください(7.58MB)

メジロ

 

こちらは、50%縮小をかけたもの。ISO12800という事を考慮しなくても、十分な画質だ。

ウグイス

もちろん、ISOはなるべく低く設定して撮影するに越したことは無い。

しかし、PCで画像を確認していると、EXIFを見るまでISO12800だという事に気づかない事すらあるほどだ。

 

 

f/8対応AFと-3EVに対応したAFについて

 

D750はf/8対応のAFポイントが11点ある。

開放F値、合成F値がf/8の場合でも、AFが保証されているAFポイントである。

実は、保証されていなくともAFが出来る場合があるが、安定しないため実用上は厳しい場合が多い。

 

f/8対応のフォーカスポイント

pic_12

画像はニコンのウェブサイトより

 

これはどういう事かというと、つまりサードパーティーなどの安価な望遠レンズや、

300mm f/4 などの望遠レンズに2倍のテレコンバーターを装着してもAFが出来るという事である。

高価なヨンニッパ、ゴーヨン、ロクヨン、ハチゴローには手が出ないとしても、600mmが実現出来るのだ。

 

実際に私は、TAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD (Model A011)を装着して撮影している。

このレンズは600mmの開放f値が6.3のため、通常のAFポイント(f/5.6に対応したAFポイント)でもAFは出来るが、精度が落ちる可能性がある。

しかしf/8対応のAFポイントであれば十分な精度を出す事が可能だし、安定もする。

野鳥撮影をしていると、100万円クラスのレンズが欲しくなってしまうものだが、これならばお金をかけずにある程度は楽しめる。

 

また、D750は低輝度時の合焦性能が「-3EV」(ISO 100・20度)を達成している。

-3EVがどの程度の暗さかというのは少々分かりにくいが、月明かり程度の明るさと言われているようだ。

 

そこまで暗い状態で野鳥を撮る事は殆ど無いが、夜間など、極端に暗い場所でもAFが出来る事は確認した。

例えばD4SやD810ですら、-2EVまで、D610は-1EVまでという事を考えると、D750の-3EVという数字が際立つ。

この十分な暗所AFの性能は、森の中など暗い場所でも問題無く合焦出来る事を意味する。

 

 

Nikon D750で野鳥を撮る

飛びモノに有効なグループエリアAFは、飛翔する野鳥に対してのAFの抜けが劇的に減った。

そしてf/8対応AF、ISO12800でも常用出来る高感度画質、-3EVという暗所AF。

今までなら諦めていたようなシーンでの撮影を可能にする基本性能は素晴らしい。

14bit RAWでの連写時にも詰まる事が無い十分なバッファ、

EXPEED4によるホワイトバランスの改善、グリップの握りやすさ、チルトする液晶など、細かな点も気に入っている。

 

不満は、6.5コマ/秒という連写速度。

一眼レフカメラにおいて、とりわけ野鳥を撮るならば連写速度というのは購入検討時に大変大きな意味を持つ。

ニコンでは、D300Sが縦位置バッテリーグリップを付ければ8コマ/秒を達成していた事や、

キヤノンから出たEOS 7D Mark IIが10コマ/秒を達成している事を考えれば、寂しい数字である事は事実だ。

せめてDXにクロップした時にでももう少し連写が早くなればと思う。

実は、以前知人よりD300Sを借りて使っていた事があり、8コマ/秒という世界を体感した後に6.5コマ/秒のカメラを買うのは躊躇した。

 

しかし、連写速度以外の性能は文句なしに素晴らしい。

よくよく自分の写真を眺めていたら、連写速度が足りずに撮れなかった写真など、殆ど無かった事に気づいた。

それよりもISOが上がってしまう事により塗り絵のような写真になっているものや、

AFが合っていないものなどの方が圧倒的に多い。

 

そういう方には、是非野鳥を撮影するカメラとして、D750をお勧めしたい。